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ペンケース開発秘話

筆記具以外は製造しない、というか出来ないと思っていましたが、
これだけはキリタの責任において創らなければならないと思いました。

「桐田さんではペンケースは売っていないの?」

「お気に入りのキリタペンを入れるペンケースを探そうと思います。」

ここ数年、お客様のそんな声をよく聞くようになっていました。

ペン工房キリタで販売しているのは、自社で製造したボールペン、シャープペンのみです。他の多くの文具系ネットショップのように、あらゆる商品を揃えて販売するようなことはしていません。(メーカー向けOEMでは、水性ボールペンや万年筆、製図用シャープなども若干作っていますが。)

あくまで自社の工房で製造したものを売る。自社で責任の取れるものだけをお届けする。と言うコンセプト運営しています。

まあ、ノートやら手帳を作ろうと思っても作れないし、小さな会社が分不相応に後発で出て行っても受け入れられるほど甘いものでもないと、正直思っています。

ただ、ペンケースだけはどうしても作りたかったのです。

 

ペンケースへの思い

ペンを作る人間としては、ペンがどんな場面でどんな風に使われるのかを良く想像します。例えば、スーツの内ポケットやYシャツからさっと取り出し、契約書にサインをする姿なんか。

でももっと嬉しい情景としては、机や鞄から嬉しそうにペンケースを持ち出し、そこからお気に入りのペンをニコニコしながら取り出してチラッと眺め、そしておもむろに書き出す情景。

そんな情景の中で、ペンと同じくらい重要なアイテムがペンケースですよね。ペンが剣ならペンケースは鞘(さや)。ペンがピッチャーならペンケースはキャッチャー。戦いから戻ったペンが体を休める我が家。ペンケースにはそんな思いがありました。

実際には、ネットショップを始める前、メーカーへのOEMを専業にしていた頃には、ペンケースを作ろうなんて夢にも思っていませんでした。

しかし直接エンドユーザーの声をいただけるような立場になり、前述のような声に接していくと、ペンケースまで責任を持って、初めてペンメーカーとして完成するのではないか。そんな思いがこみ上げてきました。

 

 

先ずは研究から

最初は自分用のペンケースを色々ネットで物色する事から始めました。

ペンケースには大きく分けて、たくさんのペンを一緒にざらっと入れるタイプと、お気に入りの数本のペンを大事に収納するタイプがありますが、このページでは数本までのペンを大事に入れるペンケースについて話をします。

別にざらっと入れるタイプに悪意はなく、世の中での必要性も認めていますが、ここではあくまでお気に入りのペン工房キリタのペンを入れるペンケースが前提となりますのでご承知おきくださいませ。

まだ自分で作ることを決意する前、自分で使うためにいくつか買ってみたのですが、使ってみるとどうもいまいちしっくり来ない。もうちょっとここがああなればいいのにとか、あそこがこうなればいいのに、ってかんじで長続きしないんです。

さらに、漠然と自分で作ることを考え始めてから、いくつか購入して試しても、やっぱり「帯に短し襷に長し」的な感じがますます強くなり。ますます自分で作りたいという気持ちが強くなってきました。

もちろん、気になるペンケースを片っ端から全て買えるほど、恵まれた環境にある訳ではないので、買えなかった高いペンケースも多いのですが、色々見て回って、ペンケースには大体3つの傾向があるように思いました。

@欧米メーカーのペンケースは、かっこいいし機能も良さそうだけど高い。欧米の筆記具ってかなり高い印象がありますが、ペンケースもやっぱり高いですね。もうちょっと気軽に手の届く価格にならないですかね。あと、傾向として欧米のものはサイズがでかい。欧米人の体のサイズに合わせてるんでしょうね。

A)日本の筆記具メーカーのものは、安いけどモノも安っぽい。そもそも日本の筆記具メーカーからはあまりペンケースって発売していませんね。本来自分たちが作る物じゃないと思っているんでしょうね。

B日本の鞄メーカー、革製品の工房のものは、手ごろな価格とデザインだけど、ペンマニアの求める機能が分かっていない。どうもいまいち使いにくいんですよ。「ペンケースなんてこんなもんでいいかな」って言うつぶやきが聞こえてきそう、正直。

じゃあ、僕が求めるペンケースの必要条件を自分なりに考えると、

ペンケースの必要条件とは

■ペンケースの中でペン同士が擦れたり当たって、大事なペンの表面に傷が付かないこと。

■どれが目的のペンなのか一目で分かり、かつ取り出しやすいように、ペンがケースの中に完全に潜らないこと。

■クリップを差して固定するタイプは抜き差しがしにくく、特に厚い革だとクリップがだんだんゆるくなる危険もあるので、クリップを差さずに使えること。

■クリップに差さなくても、ケースの中でペンが行ったり来たり、カタカタしないこと。

■ペンケースの金具はケース自体が厚くなるし、当たるとペンがキズにもなるので、金具は使わないこと。

■無駄に嵩張ると、鞄の中で邪魔になるので、最小限のペンをコンパクトに収納できること。

■日本製であること。

研究を始めた頃には、こんな風にはっきりと明文化は出来ていた訳ではありませんでした。ただ、買ってきた色々なペンケースの中から、このケースのこの部分の機能は良いとか、あのケースのあの部分のデザインは良いとかやっている内に、だいぶ自分が求めるものが見えてきました。

 

革製品の工房を探す

こんなペンケースが作りたいという考えがまとまってきたら、次にはいったい誰にそのペンケースを作ってもらうのかという事を考えなければなりませんでした。

なにしろペン工房キリタは金属加工の工房で、革製品なんて作れるはずもない。どうしてもどこかの革製品の専門工房に頼むしかない訳です。

革巻きのペンを作ったことがありましたので革巻きの業者は知っていたのですが、色々相談に乗って貰うためには、総合力を持つある程度の規模の会社がいいとは思いました。

でも、なにしろ小さなボールペン屋が頼むのですから大量には頼めません。自社ブランドが既に超有名な大きい所では相手にしてくれないでしょう。

自社ブランドも展開しているけど、OEMも受けてくれる所。小ロットでも快く引き受けてくれる所。こちらの要望を丁寧に聞いてくれて一緒に色々考えながら開発してくれる工房。そんな所が良いのです。



こう書いてゆくと、さぞかしあちこちの工房に当たったのかと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

実はネットで色々なペンケースを購入していた時に、すっかり惚れ込んでしまったショップがありました。

その店は仕入れて売るだけのショップではなく、自社の工房で作った物だけを販売する製造直販の革製品専門店。

ネットショップを見るとバッグ、手帳、財布を中心に名刺入れ、パスケースまでトータルな品揃えで、全ての製品がすっごくセンスが良いんです。ホームページの作りもとても綺麗で丁寧です。

実際に注文をしてみると、注文に対する対応も良く、届いた梱包は丁寧で、同梱してあったお便りのふんわかした感じは実にすばらしいんです。こんなふうにキリタもなりたい。そんなショップでした。

しかも、相手の住所がキリタと同じ東京都江戸川区。近いって言うのはけっこう大きなアドバンテージなんです。打ち合わせにも行きやすいし、何か問題があったらすぐにすっ飛んでいけますから。

もう僕が頼むのはこの工房しかない。絶対ここならキリタのためにすばらしい製品を作ってくれる。相手にコンタクトを取る前から、僕の中では勝手に妄想が膨らみ根拠のない確信が芽生えてしまっていました。

 

さすがに初めて電話をしたときにはビビりましたが、その工房Cカンパニーさんは僕が思ったとおりの工房だったのです。

 

Cカンパニーさん

訊ねていくと、Cカンパニーさんは実にキリタと共通点の多い会社でした。

ただ、鞄業界に詳しくない僕が知らなかっただけで、ハンズやロフト、丸善にも自社ブランドの製品を置いている人気ブランドでした。(その点はキリタは全然及びませんが。)

そもそも前述した特徴である、自社ブランドを展開しつつOEM生産も若干やり、自社で作った物だけを販売する製造直販の専門ネットショップを持つ工房って、かなりの部分キリタとかぶっています。場所も東京下町の江戸川区で、共に昔っから工場を持つ隠れた老舗であることも同じです。

商品デザイン担当の佐藤明美さんは、僕と立場も似ていて年齢も近く話も合い、とても丁寧に相談に乗ってくれました。前述したペンケースの必要条件も、Cカンパニーさんと色々相談していく中でよりはっきりしていったモノです。

正直、革製品の作り方なんて全く分からない訳ですから、こちらの希望については全てお願いしましたけど、細かいことは佐藤さんに考えて貰いました。相手を信頼したら後は餅は餅屋です。使用する革の種類や色、その他僕の分からないことは殆ど彼らの「オススメ」で作りました。(笑)


製品には、キリタのロゴとCカンパニーのロゴの両方を入れてあります。

 

数度の打ち合わせをしてサンプルを作り、それを元にさらに変更点、修正点を話し合い再度サンプル作ります。そうした繰り返しの上で出来上がったのが今回発売するペンケースです。


ペンケースオープンタイプ(2本差し)

ペンケースシースタイプ(3本差し)


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ちなみに、

別ページを設けてCカンパニーさんを訪問したときの様子も紹介をしていますので、是非ご覧になってください。

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Cカンパニーさん訪問記はこちらから

Cカンパニー

 

 

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